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『スパイダーバース』を超える自由度

Netflixで独占配信中の『ミッチェル家とマシンの反乱』が、第94回アカデミー賞の長編アニメ映画賞にノミネートされた。『LEGO(R)ムービー』シリーズ(2014年ほか)や『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)の制作陣による、動に動をぶつける超展開が楽しいハチャメチャ&ハートフル系アニメだ。 [caption id="attachment_74791" align="alignnone" width="1440"] Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』配信中 ©2021 SPAI. All Rights Reserved[/caption] 『ミッチェル家~』の物語はいたってシンプル。スマホに搭載されたAIが人間を恨み、最新のスマートロボット軍団を操って反乱を起こすというもの。能天気な人類を殲滅せんとする非情なハイテク一揆に立ち向かうのが、主人公ケイティと弟アーロン、母リンダ、父リックからなるミッチェル家というわけである。 [caption id="attachment_74796" align="alignnone" width="1440"] Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』配信中 ©2021 SPAI. All Rights Reserved[/caption] キャラクターデザインは『くもりときどきミートボール』(2009年)がもう少しリアルになった感じで、スケッチとセル画と3DCGとクレイアニメをミックスした独特な質感が特徴。同じくNetflixのオムニバスアニメ『ラブ、デス&ロボット』(2019年~)の全作品のテイストを全部ぶち込んだかのような、『スパイダーバース』からまた1段階ギアを上げた(かつハンドルが引っこ抜けた)ようなアニメ表現が楽しい。 [caption id="attachment_74797" align="alignnone" width="1440"] Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』配信中 ©2021 SPAI. All Rights Reserved[/caption] あらすじと直接関係ない小ネタも満載で、まるでスナップチャットやTikTok、インスタのリール動画まんまみたいなカットが度々挿入される。もちろん日本のアニメ表現らしいパートもあるが、あのAC部の影響を感じさせる瞬間もあったりして、とにかく観ていて楽しい。とはいえ“なんでもアリのノリ”を余計なノイズを感じさせずに魅せきることはすさまじく難しいはずで、監督のワンマン作品では不可能。このあたりは製作チーム内の“才能の使い方”の巧さでもあるだろう。 [caption id="attachment_74799" align="alignnone" width="1440"] Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』配信中 ©2021 SPAI. All Rights Reserved[/caption]

機能不全デジアナ親子を通して“肯定”を描く

声優陣はコメディ畑からおもしろキャストが多数参加していて、とくにマーヤ・ルドルフやフレッド・アーミセン、ベック・ベネットらサタデー・ナイト・ライブ勢の存在を意識して観るといっそうニヤニヤできる。物語自体は結構な規模の終末状態に陥るのだが、上記コメディ勢に加えクリッシー・テイゲン&ジョン・レジェンドのガチ夫婦や、コナン・オブライエン、さらにオリヴィア・コールマンといった豪華キャスト、そしてファービーほか00年代前後のなつかしネタの数々のおかげで深刻な気分にはならない。 [caption id="attachment_74809" align="alignnone" width="1440"] Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』配信中 ©2021 SPAI. All Rights Reserved[/caption] ただし機能不全家族が大きなテーマになっているため、親子間の愛情のすれ違いを共闘によって乗り越えていく展開には、親子の交流が希薄だったり家族関係に後悔を抱えている人なんかは胸が締めつけられるかもしれない。初期X世代らしき両親と後期Z世代の子どもの関係がギクシャクするのは当然なのだが、我々にも身に覚えのあるそういった不全の結果が人類滅亡危機につながる展開は、現代社会に生きていればさもありなんである。 [caption id="attachment_74798" align="alignnone" width="1440"] Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』配信中 ©2021 SPAI. All Rights Reserved[/caption] 本作はネット依存やSNSへの批判が込められているように思われがちだが、そのどちらも否定はしていない。ネットミームも時代が生んだアートと捉え、スタンプみたいな小ネタを最大限活用した演出(何度も登場するオポッサムもSNSトレンド)や、ラップトップ/動画サイトが親子を引き離し、やがて修復するツールにもなる展開もしかり。映画製作を夢見るオタク=ケイティと恐竜マニアのコミュ障=アーロンは、監督自身の投影だろう。 [caption id="attachment_74808" align="alignnone" width="1440"] Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』配信中 ©2021 SPAI. All Rights Reserved[/caption] かつての監督自身がそうであったように、サブカル系サイトの掲示板に張り付いていたようなガチオタが「ヘンな奴」と言われながらも“好き”を突き詰めた結果、こんな傑作を作り上げてしまうことだってある。本作は予期せず現実世界のパンデミックとリンクしたことで、結果的にスマホやラップトップがなければ家族や友人の顔を見ることすらできなくなったニューノーマル化も取り込み、それら全てを肯定する形になった。スマホの自撮りとアナログな家族アルバムが共生できる時代、カタチにとらわれずに“つながっていること”を大事にしてさえいればいいじゃないか、と。 [caption id="attachment_74790" align="alignnone" width="1440"] Netflix『ミッチェル家とマシンの反乱』独占配信中[/caption] 余談だが、予告編でもフィーチャーされている冒頭シーンのビコビコ楽曲は、The Mae Shiが2008年にリリースしたアルバムに収録されている「Lamb and the Lion」。サブスク全盛の今では信じられないが、当時はこういったインディーバンドでも日本盤CDがそれなりにリリースされていた。じつにY世代(1980年~2000年前後の生まれ)らしいチョイスではあるが、本作においてデジタル化の寂しさを感じる数少ない要素だったりもする。 https://open.spotify.com/track/4uCMON4AN2n6JKm5LjrOkR?si=f2a947ea469d438f 『ミッチェル家とマシンの反乱』はNetflixで配信中 https://www.youtube.com/watch?v=wY5e804jg98&feature=emb_title

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